代表取締役の住所、登記簿に載せないでほしい・・・株式会社向け「住所非表示措置」とは

「登記簿上、代表取締役の住所が誰でも見られる状態になっている。何とかならないか。」

登記事項証明書(いわゆる謄本)は、法務局やインターネットで誰でも取得できます。また、代表取締役の住所は登記事項となっています。

したがって自宅を本店所在地としていなくても、代表者の自宅住所が第三者に知られてしまうことになります。

そこで、プライバシーの保護をはかる観点から、令和6年(2024年)10月1日より、株式会社向けに「代表取締役等住所非表示措置」が開始されました。

今回のコラムでは、この制度の概要と、実務上の注意点をご紹介します。

※なお、この制度とは別に、DVやストーカー被害者などを対象にした住所非表示の仕組みもあります。https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00166.html

目次

そもそも、どんな制度なのか

「代表取締役等住所非表示措置」とは、株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人(以下、代表取締役等といいます)の住所を、登記事項証明書や登記情報提供サービスに表示しない措置です。

住所が「最小行政区画」までの記載に

非表示となるのは住所の一部で、具体的には市区町村(東京都は特別区、政令指定都市は区)までしか表示されなくなります。

たとえば「札幌市中央区」と表示されるにとどまり、それ以降の番地等は記載されません。

法務省ウェブサイトより引用

対象は株式会社、特例有限会社のみ

対象となるのは株式会社(特例有限会社を含む)の代表取締役等です。合同会社などの持分会社は対象外ですのでご注意ください。

申出の手続きと必要書類、注意点

申出は、登記申請と同時に行う必要があります。住所非表示の申出だけを単独で行うことはできません。

対象となる登記申請

対象となる登記は、就任・住所変更・重任など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記申請です。これらの登記と同時に申出を行います。

手数料

住所非表示の申出自体には手数料はかかりません(登録免許税は上記登記申請分のみです)。なお、司法書士等に依頼する場合は別途報酬が発生します。

申出事項

・代表取締役等住所非表示措置を希望する旨
・代表取締役等住所非表示措置の対象となる者の資格、氏名及び住所

必要書類

添付書類は、上場会社かどうかによって異なります。

上場会社の場合

金融商品取引所のウェブサイトの写しなど、上場していることを証する書面が必要です。

上場会社以外の場合

上場会社以外の場合、次の3点が必要となります。

(1)株式会社が受取人として記載された書面がその本店所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等(または、登記申請を受任した資格者代理人が本店所在場所の実在性を確認した書面)

(2)代表取締役等の氏名・住所が記載された市区町村長等による証明書:住民票の写し、印鑑証明書など)

(3)株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面:司法書士や公証人による作成が必要

なお、(3)については、一定の期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は添付が不要となります。実質的支配者リストについてはこちらのコラムもご参照ください。

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注意点1:重任(再任)の場合、既登記の住所は消えない

住所非表示措置を利用しても、過去に登記されていた住所は消えません。

登記事項証明書には「現在事項証明書」と「履歴事項全部証明書」があります。非表示措置はあくまで「これから登記される住所」を表示しないものであり、すでに登記されている過去の住所の記録を削除するものではありません。

つまり、重任(再任)のタイミングで初めて住所非表示の申出を行っても、それ以前に登記されていた住所は履歴事項全部証明書に残ったままとなります。

住所非表示措置によるプライバシー保護の効果を最大限に得るためには、できる限り早い段階、理想的には最初の就任時や会社設立時から申出を行うことが重要です。

注意点2:住所変更時の登記義務は引き続き存続

非表示措置が講じられていても、代表取締役等の住所が変更になった場合は変更登記申請をする必要があります。

なお、この場合、新住所を非表示としたい場合は改めて住所非表示の申出も必要となります。

住所が登記簿上非表示になることによるデメリット

この制度を利用する際は、住所が登記事項証明書に表示されなくなることで生じる実務上の影響も十分に理解しておく必要があります。法務省も、申出前に「慎重かつ十分な検討」を求めています。

本人確認への影響

各種手続きで登記事項証明書を本人確認資料として使う場合、住所が表示されないため、別途会社の印鑑証明書等の提出が求められることが考えられます。

金融機関への提出書類が増える可能性

融資審査や口座開設等において、金融機関が登記事項証明書で代表者住所を確認するケースでは、別途住所を証明する書類の追加提出が必要になる場合があります。また、実質的支配者リストの提出を求められる可能性もあります(実質的支配者リスト制度についてはこちら)。

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取引先・契約書類への影響

取引先との間で、登記事項証明書だけでは代表者に関する確認が取れず、別途書類の提出が求められることが考えられます。

まとめ

代表取締役等住所非表示措置は、令和6年(2024年)10月から施行された比較的新しい制度で、一般の株式会社に広く認められています。

プライバシー保護の観点から有益な制度ですが、本人確認書類の追加が必要になる場面が増えたり、金融機関や取引先との実務に影響が出たりする可能性がある点は事前に把握しておく必要があります。

また、重任のタイミングで初めて申出をしても、過去に登記されていた住所は履歴事項として残るという点は留意すべきです。

「自社では利用できるか」「どのタイミングで申出すればよいか」など、ご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

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