フリーランス法、あなたの会社も対象かも。公取委講演で聞いた実務ポイント

2026年2月、札幌司法書士会で行われた公正取引委員会事務総局北海道事務所による「フリーランス法」に関する講演に参加しました。

フリーランス法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は2024年11月に施行されたばかりで、まだ企業側の認識が十分に浸透していないと思われます。

公取委は現在、個別企業向けの講演は行っていないものの、専門学校や司法書士会など、各種団体向けに積極的に啓発活動を展開しているとのことでした。

今回の講演で特に印象的だったのは、「対象範囲の広さ」と「下請法(現・中小受託取引適正化法、いわゆる「取適法」)との違い」です。

本インフォグラフィックはNotebookLMにより作成し、一部改変しています。
目次

対象者・対象取引の広さ

フリーランス法の対象となる「特定受託事業者」とは、個人または法人を問わず、従業員を使用しない事業者のことです。

典型例としては、インフルエンサー、フリーランスのデザイナー・ライター・エンジニア、個人タクシー、配送ドライバー、清掃業者など。契約形態にもよりますが士業も対象になりえます。

重要なのは、発注者側も「大企業だけ」が対象ではないという点です。

中小企業や個人事業主がフリーランスに業務委託をする場合も、この法律の対象となります。「うちは小さい会社だから関係ない」という認識は通用しません。また業種・業界の限定もありません。

そして対象取引も広範。「物品の製造・加工委託」「情報成果物の作成委託」「役務の提供委託」となっていますが、上記典型例のフリーランスへの依頼内容と考えればわかりやすいかと思います。

義務と禁止行為

フリーランス法では、下請法(取適法)と同様に「義務」と「禁止行為」が定められています。

義務としては、業務内容や報酬額などの取引条件を書面(電磁的方法も可)で明示することが求められます。また、報酬の支払期日は、業務完了(給付受領)後60日以内とされています。

禁止行為としては、やり直しの強制、一方的な値引き、返品、不要なサービスの押し付けなどが挙げられます。この点は下請法(取適法)と共通しています。

下請法(取適法)との違い

共通点が多い一方で、下請法(取適法)との大きな違いもいくつかあります。

まず、下請法(取適法)で対象外となっている建設工事や、自社利用の委託といった業務も対象となります。

一方で、下請法(取適法)で義務付けられている書類の作成・保存義務や、遅延利息の支払義務、有償支給原材料の概念がフリーランス法にはありません。

そして、最も意外なのは、禁止行為は1ヶ月以上の継続的な業務委託のみが対象という点です。つまり、1ヶ月未満のスポット案件については、禁止行為の規定が適用されないのです。

これは一見、企業側に有利に見えるかもしれません。しかし、逆に言えば、「1ヶ月未満の契約を繰り返して、禁止行為を行う」という潜脱のリスクもあります。公取委がこの点をどう運用していくのか、今後の動向に注目する必要があります。

就業環境整備義務

もう一つの大きな違いは、「就業環境の整備義務」です。

これは下請法(取適法)にはない規定で、監督官庁も厚生労働省となります。

具体的には、育児・介護等と業務の両立に対する配慮や、契約の中途解除等の事前予告などが求められます。ただし、この義務が適用されるのは、6ヶ月以上の継続的な業務委託の場合に限られます。

今回の講演では、就業環境整備義務については詳細な説明がありませんでした。またこれらの義務についてはまだ勧告事例もありません。厚生労働省がどのような態度で臨んでくるのかは、現時点では未知数です。

実務上の注意点

公取委は現在、フリーランスとの取引が多い業種を集中的に調査しています。すでに、取引条件の明示がない、報酬支払いの遅れなどで数社が勧告を受けています。

特に注意すべき点は「業界慣行」が法律違反になる可能性があるという点です。

例えば、出版業界では出版日を基準に報酬を支払う慣行がありますが、これは法律の規定(納品後60日以内)からかなり遅れることになります。自社で「当たり前」と思っている慣行についても、法律に沿って見直す必要があります。

特に、下請法(取適法)の適用経験がない中小企業や個人事業主は要注意です。フリーランス法は大企業だけでなく、広範な事業者が対象となり得ます。

今後の展開

下請法(取適法)については、現在、公正取引委員会や中小企業庁による企業内運用状況の確認が広く行われています。フリーランス法についても、当初は重点業種に集中していた当局の調査が、今後は幅広い業種に拡大していくと予想されます。

「うちは関係ない」と思っている企業も実はリスクがあるかもしれません。むしろフリーランスと全く取引がない会社の方が珍しいのではないでしょうか?

一度、自社のフリーランスとの取引内容を見直してみることをお勧めします。

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