契約書の起案やレビューをしている方なら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。「会社によって存続条項(残存条項)の書き方がずいぶん違うな」と。
ある契約書には秘密保持条項だけが存続対象として列挙されている一方、別の契約書では10以上の条項が列挙されている。あるいは、そもそも存続条項の定めがない契約書もある。
この違いはなぜ生じるのでしょうか?存続条項の位置づけや考え方について、整理してみました(一部私見も含みます)。

存続条項とは
存続条項とは、契約終了後も当事者間で効力が存続する条項として定めるものです。残存条項ともいわれます。
具体的には「第〇条は本契約終了後もなお有効に存続する」といった条項です。
なぜ必要なのか
「契約業務の実用知識」第3版(堀江泰夫著、商事法務)によると、存続条項は英文契約から由来する条項のひとつであるとして、1.は確認的に、2.は効力を継続させるために存続条項として合意をしていると考えられるとの記載があります。
例)
- 委任の事後処理義務(民法645条)
- 賃貸借の原状回復義務(民法608条2項)
- 継続的取引での未履行の権利義務
例)
- 秘密保持義務
- 競業避止義務
- 知的財産権の取扱い
特に2.については何も手当てをしなければ契約終了とともに効力を失ってしまうため、それが当事者にとって不利に働く条項であればもれなく規定しておく必要があるということになります。
存続条項として定められることが多い条項
一般的には以下の条項が存続条項とされることが多いです。
- 秘密保持義務
- 競業避止義務
- 知的財産権の帰属・取扱い
- 保証や契約不適合責任(瑕疵担保責任)
- 製造物責任
- 損害賠償責任
- 反社会的勢力の排除
- 合意管轄裁判所(不要との見解もあり)
また、秘密保持契約(NDA)では、契約終了後の情報の返還・破棄といった条項も存続条項として規定する必要があります。
なお、ライセンス契約などの一定期間継続する前提の契約は、契約終了後の販売権やライセンス料をどうするかといった内容も存続条項になりえます。
存続期間の考え方
上記のとおり、合意しないと失効してしまうもの、例えば秘密保持義務は存続条項に入れないと存続しないため要注意です。
一方で、期間制限がないとずっと義務を負うことになります。情報の価値は時間経過により陳腐化することが通例ですから、例えば3年間などの期限を設定することが多いです。
注意点
残存条項の条ずれによる疑義を防ぐためには、見出し(例:第●条(秘密保持義務)など)も記載するのが有効です(上記「契約業務の実用知識」)。
また、自社に有利に、と考えるあまり残存させる内容や期間が不当に長くすると、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する可能性がある点にも注意が必要です。
まとめ
「契約書の「存続条項」、会社によってこんなに違うのはなぜ?」--この違いが生じる背景には、法律上当然に存続するものを確認的に列挙するかどうかが各社の判断に委ねられているという点があると思われます。
必須なのは合意しなければ失効してしまう条項の手当てであり、そこさえ押さえていれば、存続条項の「ボリューム感」は会社ごとに異なって当然といえます。
ただ、存続させる条項や期間は多ければ良いというものではありません。自社に有利な設計を追求するあまり相手方に過度な負担を課す内容になっていないか、バランスの観点からも見直すことをお勧めします。
契約書の存続条項を含む条件整備についてご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献 :「契約業務の実用知識」第3版 堀江泰夫著(商事法務):企業法務大ベテランの司法書士による著書。実務と理論のバランスが取れている良書です。他の書籍では触れられていない実務上悩んでしまうポイントについても多くの記載があります。
