2024年4月から相続登記が義務化されました。
法改正後の相続だけではなく、改正前に不動産を相続して相続登記をしていない場合も義務化の対象になるので要注意です。
土地建物が誰のものだかわからなくならないように、相続人=所有者を法務局に登録しなさい、というお達しですが、まず気になるのが「もし何もしなかったらどうなるの?」という点ではないでしょうか?
相続登記を行わなかった場合のペナルティ(2024年相続登記義務化後)
改正法によれば、正当理由がなく所定期間(3年)内に登記がされない場合は「10万円以下の過料」が課されるおそれがあります。(改正不動産登記法164条1項)
一応、相続登記ができないことについて「正当理由」がある場合は過料の対象にはならないようで、そのパターンは今後通達で明確化されるとのことです。
例えば数次相続が発生していて相続人が多数に上る、遺言有効性や遺産の範囲が争われているケースが想定されているようですが、「正当事由」はかなり限定的になることが予想されます。
なお、過料は刑事罰ではなく行政上の義務違反に課される行政罰で、前科はつきません。
過料制裁っていってもポーズだけ・・・ではなく、登記をしないこと、すなわち登記懈怠に対しては本当に過料の制裁が来ますので要注意です。(役員変更登記懈怠で実際に通知が来たのを見たことがあります。)
ただ、上記の「正当理由」に該当しなかったとしても、相続関連の費用と手間を考えて過料の制裁を選ぶ・・・という選択をする人も出てくる可能性もありますね。なんせ10万円なのでコストの方が高いわ!という人は多いでしょう。
そうなると国の抱えている課題(不動産所有者の明確化が必要)は完全に解決されないことになります。
ペナルティを回避するためにはどうすればよいのか?
相続登記をする(正攻法)
これができたら誰も苦労しないのですが、正攻法としてはこれになります。
お早めにお近くの司法書士に要相談、です。
心当たりがなければ近くの司法書士会に連絡すれば、紹介してもらえます。
「相続人申告登記」をする(2024年4月以降、根本的解決にはならない)
法定相続人の申告により、その不動産に相続人の氏名と住所などが登記される制度ができます。
相続人全員の申告でなく誰か一人の申告でよいとのことなので、国としてはとりあえず「連絡先」がわかればよい、という発想なのでしょう。遺産分割などに時間がかかって相続登記を早期にできない場合を想定しているようです。
これでとりあえずは「相続登記義務の履行」となり、過料制裁の対象にはならないようです。
ただ、これは単に連絡先の公示なので、その後遺産分割やまともな相続登記などの手続が結局必要になります。
仮に「相続人申告登記」をそのままにしたとすると、ずっと申請者がその不動産の窓口としての責任を負うことになるため、それはそれで別の問題が生じそうです。申請者が亡くなったりするとさらに厄介になることが想定されます。
所有者不在土地の解消、活用という趣旨には賛同できるものの、この相続登記義務化の話をより理解してもらうためには、そもそも私たち「国民」にとって「なぜ相続登記が必要なのか」「どういうメリットがあるのか」という点について、法務省はもっとアピールしていくべきでしょう。
また、登録免許税などのコストについても補助や、現状以上の減免が望まれるところですね。