「議論の取りまとめ」の概要
オリジナルはhttps://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00078.html、https://www.moj.go.jp/content/001413073.pdfです。
かなり要約したので検討会の意図に沿っていないものもあるかもしれませんが、要するにこういう内容であると理解しました。
所感と要望
定款認証手続が見直されれば起業家の負担軽減につながるのか?
違和感があるのは「定款認証手続が見直されれば起業家の負担軽減につながる」と読める点です。
この「取りまとめ」においても存在意義が明確にできないような現状の公証人の定款認証手続は「負担軽減」につながるかどうかに関係なく、見直されるべきです。
そして私を含めた多くの起業経験者が手続的な負担の軽減としてお役所に求めているのは、この「取りまとめ」にも言及がある「起業家が一度の手続申請で問題がなければ会社設立に至ることができるような仕組みの構築」です。
既存の「会社設立ワンストップサービス」のさらなる充実を
そしてその目的で構築された「会社設立ワンストップサービス」(デジタル庁)という仕組みが既にあるのですから、既存のサービスのブラッシュアップ、すなわち法務省や関係各省はデジタル庁と連携してそれぞれの管轄部分をもっとわかりやすく使いやすくすることに注力していただきたいです。
私は実際に「会社設立ワンストップサービス」を利用して会社を設立しましたが、関係する各役所の温度差があり、使いにくかったり、結局紙で出し直さなければいけない書類があったりしました。
定款についても「会社設立ワンストップサービス」上では作成できず、「どこかできちんとした定款が作成されている前提」でした。初めて会社設立する人(多くの人がそうだと思いますが)は、まずそこで手が止まることでしょう。
「モデル定款」なるものを作成するのであれば、この「会社設立ワンストップサービス」に組み込まれるべきでしょう。ただその出来上がり次第ではかえって起業家の負担になるという点にもご留意いただきたいところです。
設立時点の啓発活動や本人確認・意思確認の仕組み構築は法務省の重要な役割
そしてこの「取りまとめ」にも触れられている①定款や法人格の存立をめぐる紛争の予防、②不正な起業・会社設立の抑止、③マネー・ロンダリング対策(実質的支配者の把握)といった取り組みは、起業家や関係者を守るという意味でも重要です。
実効性のある啓発活動や本人確認・意思確認の仕組みの構築と運用に注力すべきなのが法務省で、モデル定款の作成よりも重要な取り組みだと思います。
例えば現在、合同会社の定款認証はそもそも不要とされていますが、上記①②③に照らすと何らかのスクリーニングは必要なのではないでしょうか。この点はむしろ軽減してはならない部分であり、起業当事者が負担に感じたとしても行うべき施策です。法務省による有効かつ効率的な制度設計と運用が必要と感じています。
追記…マネーフォワード社&起業経験者からのツッコミが入る
なんと、2月15日に検討会の6回目が開かれていました。
ここにマネーフォワード社が招かれたようで、その意見は起業当事者としてうなずける点が多いです。下記はMF社が提出した資料から一部引用したものです。
(日本公証人連合会「定款作成ツール」とはこちらのことです。)
公証人も定款作成や定款認証関連に力を入れ始めたようですが、定款作成ツールについてはMF社から暗に嫌味を言われているような…。エクセルのマクロによる素敵なシステムなので言われても仕方がない部分はあります。
そして昨日内閣府で開催された「第5回 スタートアップ・投資ワーキング・グループ」では定款認証に関してさらに生々しい意見が。それにしても各省庁が似たような取り組みを重複して実施しているように見えるのは私だけでしょうか。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_02startup/240227/startup03.pdf
以前は会社設立は一部の限られた人だけの手続で、不満があっても声をあげなかったのだと思いますが、規制緩和で簡単に会社が設立できるようになったために不満が顕在化した、ということでしょう。
今後も民間の意見をよく聞いて、方向性を間違わず無駄のない検討をしていただきたいものです。(もちろん検討だけではなく施策の実現もです。)
追記2 公証人による定款認証手数料引き下げ検討開始
先日の日本経済新聞に、「公証人による定款認証手数料引き下げ検討」との記事が出ていました。
政府の規制改革推進会議は、現在最低3万円の手数料を1.5万円程度に引き下げることを検討、2024年度中に措置する、という内容です。
このような規制緩和も、そもそも「定款認証制度の意義」を一般の起業家にも理解してもらうことが大前提となるでしょう。