2023年1月、法人(合同会社)を設立しました。
役員と出資者は私一人だけの小さい法人ですが、預金のほか各種振込、支払に銀行口座は必要です。
また、銀行口座がなければ法人名義で証券口座も作ることができません。
しかし・・・法人名義の銀行口座開設って審査が厳しい上に、審査内容や基準は公開されていないのですよね。
設立後すぐに銀行口座を開設するためには、設立前から準備しておくのが望ましいです。
以下では留意すべき点と、実際にどのように対応したかを紹介します。
※現在、住信SBIネット銀行と、三井住友銀行に法人口座を開設しています。
※(20240531追記)GMOあおぞらネット銀行は法人口座開設に力を入れているようで、審査基準など開設に関する詳細情報を提供しています。この点、末尾に追記しました。
留意点1:法人の実在性、事業実態の審査がある
法人の実在性、事業実態の審査について
法人銀行口座はマネーロンダリングとか振り込め詐欺などに使われてしまう恐れもあるので、銀行側は法人が実在しているか、事業実態があるかを審査しています。
このため、会社のホームページやパンフレット、あるいは会社の事業に関する契約の写しなどを求める銀行がほとんどです。設立当初はどれもそろっていないと思うのですが・・・。
すなわち、まだ実績も信用もない設立したばかりの会社にとっては口座開設のハードルが高い、ということになります。
実際にどのように対応したか:実在性、事業実態確認について
住信SBIネット銀行は上記各資料の提出が必要なかったので、まずはこちらで開設することとし、無事開設できました。
他の銀行に比べて手続も簡単でしたので、おすすめ
です。(自身の経歴や今後の事業計画に関する簡単な説明は必要です)
住信SBIネット銀行でも申込後一定の審査はありますが、審査基準や内容はもちろん開示してくれません。
したがって推測でしかないのですが、下記の点がプラスになったと思っています。
- 法人として業務受託の予定があり、その内容について一応の説明が可能だった
- 個人でも口座を開設しており、取引実績があった
- 事業目的には(資産運用関連のみではなく)実際の事業内容も掲げた(詳細は下記参照)
- バーチャルオフィスを本店にしなかった(詳細は下記参照)
- 資本金をある程度の金額とした(詳細は下記参照)
留意点2:事業目的には「事業に関する内容」が必要
事業目的の内容について
法人によっては資産管理、運用を目的として設立されることもあると思いますが、銀行はホームページや契約書などで「実際に事業を行っているかどうか」を確認してきます。
したがって、事業目的にも当然「事業に関する内容」が入っていることが必要となります。
かつ、事業がメインであることを示すため、事業に関する内容を一連の目的の最初の方に記載しておくほうがよいです。
実際にどのように対応したか:事業目的について
設立前から上記のことを意識して、事業目的は(資産運用関連ではなく)「事業に関するもの」を最初の方に掲げました。
設立後でも定款変更して目的を追加することは可能ですが、余計な手間と費用(変更登記費用)がかかってしまうため、設立前に対応しておくのがベターです。
※確実に行う予定のものだけではなく、「今後行うかもしれない業務」を事業目的に入れておくことも可能です。
留意点3:本店(本社)はバーチャルオフィスではなく、自宅か(リアルの)事務所に置いたほうがよい
本店所在地について
銀行は法人の実態があるかどうかを気にしていますので、バーチャルオフィスを利用すると審査上マイナスになるようです。
※ただ、「バーチャルオフィスであればその契約書を要提出」とするなど、バーチャルオフィスでも口座開設可能と思われる銀行(某都市銀行)もありました。したがって、バーチャルオフィスに関する考え方は銀行によって違う可能性もあります。
※住信SBIネット銀行には、自社が提携するバーチャルオフィスがあるようです。
実際にどのように対応したか:本店所在地について
本店は自宅としました。
なお、この場合、自宅の家賃や光熱費、通信費も一部法人の経費とすることもできます。
ただ、登記簿や法人番号公表サイトに自宅住所が載ってしまうことになります。また賃貸の場合は契約で禁止されている場合もあるという点は要注意です。
※銀行口座開設後、本店を移転しました。
留意点4:資本金はあまり低額にしない方がよい
資本金の額について
会社は法律上、資本金1円でも作れます。
しかし、あまりにも資本金額が低いと銀行からの信用も低くなってしまうようです。
どんな会社であっても運転資金は必要なので、あまり資本金が少ないと「資金的に大丈夫なのか?」という銀行側の疑問は当然出てくることでしょう。
実際にどのように対応したか:資本金の額について
少なくとも数百万円単位の金額とする必要はあると考え、資本金500万円で設立しました。
(設立当初の会社の運転資金は、上記の資本金と代表者=私からの貸付金としました)
留意点5:社会保険料や税金の引落(公金支払)に対応していない銀行がある
社会保険料や税金の引落への非対応について
ネット銀行の中には入出金・振込は問題なくできるものの、社会保険料や税金の引落に対応していないものがありますので要注意です。
銀行であればすべて対応しているものと思っていたのですが、そうではないのですね~。私は今回初めて知りました。
GMOあおぞらネット銀行は2024年4月から口座振替に対応するそうです!ネット銀行でこれはすごい。
今後はGMOあおぞらネット銀行で口座を作っておけばよさそうですね◎
そのあとは例えば外貨を運用には住信SBIネット銀行が便利、といったように用途に応じて口座を開設していきましょう。
実際にどのように対応したか:社会保険料や税金の引落への非対応について
設立当初に口座開設した住信SBIネット銀行は「非対応」の銀行でしたので、社会保険料は個人の口座からペイジーで支払うことで対応しました。
(ペイジーは納付書の名義=法人と支払口座名義=個人が異なっていても支払いが可能です)
自動引落しより面倒ですが、窓口で支払うよりははるかにいいです。
・・・ということで「自動引落しができなくてもなんとかなる」のですが、自動引落しがよい方は銀行にこだわらず信用金庫で口座を開設する、という手もあります。信用金庫であれば社会保険料や税金引き落しといった公金支払サービスに対応していますので。
※設立当初は住信SBIネット銀行の口座のみだったのですが、その後三井住友銀行に法人名義での口座開設ができました。三井住友銀行は主に社会保険料引落しのために利用していますが、住信SBIネット銀行+個人口座からのペイジー払いのままでも別によかったかも・・・・と思っています。
ただ、お取引先によっては、都市銀行の口座があると法人としての信頼性が高まるかもしれないですね。
※上記のとおり、2024年4月からGMOあおぞらネット銀行が口座振替に対応するそうです!
留意点6:「固定電話番号」が手続に必要な場合がある
固定電話番号要否について
法人向けの口座を開設しようとすると、申込みの際、「固定電話番号」を求められることが意外と多いです。
自宅が会社の本店で、固定電話をすでに引いている場合は問題ないのですが、うちには固定電話がないので・・・。
これも法人の実在性の担保のため、なのかもしれませんが、固定電話を引かない人も増えている今日この頃、ちょっと時代に合っていないような気がしますね。
※結局、後日固定電話を引きました・・・某証券会社の口座開設で必須とされていたためです。
実際にどのように対応したか:固定電話番号要否について
まずは固定電話番号を求められない銀行に口座を開設しました。
こういう金融機関もあるので、他の金融機関や証券会社も固定電話番号に関するポリシーは見直していただけるとありがたいですね・・・。
以上、「事業」の準備や事業目的の記載、本店所在地の選定や必要であれば固定電話回線を引くなど、できることは設立前から準備しておけば慌てずに対応できると思います。
(20240531追記)GMOあおぞらネット銀行による審査のポイントなどが公開されています
追記日現在、GMOあおぞらネット銀行による「審査のポイント」、そして「事業内容確認書類」についての記事が公開されています。
これまでなかなか開示されてこなかった情報なので参考になりますね!
この「審査のポイント」によれば、GMOあおぞらネット銀行はバーチャルオフィスか否か、資本金額、そして固定電話の有無は気にしていないようです。
また上記(留意点5)の通り社会保険料や税金の引落(公金支払)にも対応しているので、比較的開設しやすく、かつ使い勝手の良い銀行口座と言えるのではないでしょうか。
以上、参考になれば幸いです