※この記事は「合同会社」かつ「役職員が一人の会社(社長だけ)」の会社設立を前提にしています。
2023年1月、法人(合同会社)を設立しました。設立までの期間は約3か月でした。
実際に準備したことは、ざっくり言えば下記の2点です。
この記事では下記のうち、「設立手続」を解説しています。
設立手続(この記事) | 会社の形を作る手続。主なものは下記のとおり。 ①会社の種類や概要を決める ②定款など必要なルール・書類を作成 ③役所に書類を提出(「法人設立ワンストップサービス」を利用) |
キャッシュフロー試算・資金確認 (別の記事) | 法人化によりキャッシュフローにどのように影響が出るかを試算。 主なものは下記のとおり。 ①法人の役員報酬額を決定 ②個人保有資産の法人への移管方針を決める ③個人と法人のコスト・収入を試算 このほか、運転資金準備やインボイス制度、設立関連の補助金などお金まわりのことを確認。 ※CF計算にあたっては税理士にも確認しながら行いました。 |
※設立時の「キャッシュフロー試算・資金確認」については下記の記事をご覧ください。
会社の概要を決める(STEP1~8)
法人の実質的な選択肢は株式会社と合同会社の二択でしょう。
ネームバリューというか、外からの見た目や評価を気にするなら株式会社を選択する余地はあると思います。逆に言えばそこを気にしなければ合同会社で十分と考えました。特に下記の点から合同会社を選択しました。
設立目的に照らして過不足なし
税制も社会保険制度も株式会社と合同会社で差がなく、設立の目的を達成するなら合同会社で問題ないと判断しました。
設立前の「定款認証」手続が不要
定款は法定の記載事項が揃っていればそれで問題ないので、認証不要の合同会社を選びました。
「定款認証」とは定款が正当に成立していることを公証人に確認してもらえる手続ですが、費用も手間もかかります。
設立時登録免許税が安い
登録免許税は設立登記時に支払う税金です。
合同会社は6万円(最低額、資本金額に応じて計算)ですが、株式会社の場合最低額でも15万円となります。
任期管理も変更登記も不要(役員の任期がない)
こちらもそもそも設立後のメンテが必要ない合同会社一択です。株式会社でも最長10年の役員の任期が選べますが、任期がないわけではないので改選手続や登記が必要となります。
決算公告が不要
あまり知られていないことですが、株式会社は自社の貸借対照表、損益計算書をWEBや官報で公告する義務があります。
手続やコストはもちろん、決算状況をお披露目するのも抵抗があるので、決算公告がそもそも必要ない合同会社を選択しました。株式会社でも実施していない会社が多い決算公告ですが、だからといって無視するのは違法になってしまいます。
かつてはかなり厳しい類似商号規制がありましたが、現在は「同一住所に同一商号がなければOK」なので、法人番号公表サイトで検索して、「候補になっている商号の会社が同じ場所にないかどうか」を念のため確認しました。
また、Googleで普通に検索して「ネガティブな名称でないかどうか」のチェックを行いました。
※念を入れるのであれば既存の「登録商標」と重なっていないかどうか、「銀行」や「保険会社」など一定業種にしか使うことができない言葉が入っていないか、を確認しておくことも考えられます。
※オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査もできるようです。
法人の銀行口座を開設する際、実在性、実際の事業遂行有無についての審査があるため、資産運用管理系の事業目的ではなく、実業・ビジネス系の事業目的を一連の事業目的の最初に掲げた方がよいです。(資産運用管理系は後の方に載せ、メインの事業目的ではないことを示す)
事業目的は実際に行う予定の業務に加え、今後行う可能性のある業務についても記載しておきます。
後から追加すると定款の変更だけでなく、登記の変更も必要になって手間とコスト(登録免許税)がかかります。逆に言えば当面やらないことでも記載しておくのはOKです。
事業目的は「適法」「明確」な内容であることはもちろん、会社は営利法人なので「営利性」のある内容であることが必要です。したがって「ボランティア」などはNGとなります。
具体的な記載内容として、実例、例えば上場会社の定款(金融庁EDINETで開示されている有価証券報告書の添付書類として閲覧が可能)に記載のある事業目的や、freeeの関連コラムにある事例を参考にしました。
※もし心配であれば設立登記を申請する法務局(本社となる場所を管轄する法務局)の窓口で事前に相談をすることも可能です。
世の中の会社は4月1日から翌年3月31日を事業年度として、3月末決算としているところが多いですが、特にそうしなければならない理由はありません。基本的には自由に設定できます。
私の場合は、9月末決算としました。税理士や税務署の繁忙期ではなく、比較的余裕がある時期に決算や申告をした方が親切に対応してもらえるのではないか、という理由からです。
※設立後すぐに決算期が来てしまうような設定はできるだけ避けましょう。
設立登記の申請日=設立日となります。
ここに記載した一連の準備内容をスケジュール化するといつ頃登記申請ができるか、で考えてよいと思います。気合を入れれば数日間の準備期間でも可能だと思います。
私の場合は、2022年内に個人保有株を全部処分して現金に戻す⇒法人に貸し付けて法人で運用という手順を想定していたので、2023年早々に設立登記申請をするスケジュールとし、3か月ほどで準備しました。
※なお、失業保険の給付を受けている場合、法人を設立して役員になってしまうと失業保険が受けられなくなってしまうので要注意です。この点もスケジュールを考えるにあたり考慮する必要があります。
私の場合は自宅としました。
この場合、個人の住所が会社の登記簿や法人番号公表サイトに載ることになります。
なお自宅が賃貸住宅の場合、法人の本社を置くことが賃貸借契約で禁止されている場合もあるようです。
バーチャルオフィスサービスを利用する手もあると思いますが、バーチャルオフィスに本店を置くと銀行口座開設の審査の際に別途実在性を証明する必要がある場合や、あるいは口座開設自体ができない場合もあるようです。
合同会社の場合はやや耳慣れないですが「代表社員」という肩書になります。
今回の場合、自分の会社で、出資者も役員も一人だけなので当然私になります。
資本金1円の会社設立も法律上は問題なく可能です。ただ、一定の金額がないと銀行口座開設や融資の機会に印象が悪いようです。
私の場合はまずは500万円としました。現物出資はなくすべて金銭です。
また小さい法人であっても一定額の運転資金は必要です。資金は個人から法人への貸付でも対応できますが、今回は資金の一部を資本金としました。
なお、資本金が多額(合同会社の場合約860万円以上)になると設立時の登録免許税が最低金額(合同会社の場合6万円)を超えることになるので要注意です。登録免許税額は資本金の金額により決まります。
さらに資本金が1,000万円以上になると、設立当初から消費税が課税されることになります。
※原則として設立当初の会社には消費税の免税措置がありますが、これから会社を設立する場合はインボイス制度との関係も考慮する必要があるでしょう。
「設立サポートサービス」(会計ソフト会社が提供)を選ぶ
会社設立後は日々の記帳、決算、申告が必要になりますので中小企業向けの会計ソフトを利用することになります。
そして会計ソフト提供各社は設立前のサポートサービスを行っており、必要事項を入力すれば定款その他必要書類を生成してくれます。
弥生会計、マネーフォワード、freeeの中から設立サポートが使いやすそうで、設立後の会計ソフト利用料金的にもお得なものを選びました。
比較の結果、コストが許容できるレベルで、かつ会計ソフトとして2年間無料プランがある弥生会計を選択。
設立サポートも弥生会計のものを使用しました。
※この時点では「設立サポートサービスを利用すれば会計ソフトの無料プランを利用できる」と思っていたのですが、実際のところ特に関係なかったです。それぞれ別に申込が可能でした。
なお、設立してからしばらく会計ソフトとして弥生会計を使用していたのですが、会計ソフトとしてはfreeeの方が使いやすかったので年度途中でfreeeに変更し、現在も使用しています。
弥生会計は経理に慣れている人であれば使いやすいようですが、私は素人なので・・・。私のお願いしている税理士さんも弥生会計の方が慣れていてチェックしやすいようだったのですが、説得してfreeeを使わせてもらうことにしました。
「定款」を作成する(弥生会計設立サポートサービスを利用)
会社の基本ルールですが、 弥生会計設立サポートサービスで生成されるものをそのまま利用しました。
商号や目的など、可変部分を入力することで自動的に作成されて便利でした。
設立に必要な書類を作成する(弥生会計設立サポートサービスを利用)
弥生会計設立サポートサービスで合同会社の登記申請に必要な書類である「就任承諾書」「代表社員、本店所在地および資本金決定書」「払込みを証する書面」を作成しました。
これらも定款同様、商号などの可変部分を入力すれば自動的に作成されます。
※設立サポートサービスでは登記申請書などの登記関連書類や年金事務所、税務署、都道府県税事務所に提出する一連の書類を同様に作成することもできますが、私は後述する「設立ワンストップサービス」を利用したため、これらの書類の作成はしませんでした。
マイナンバーカード・ICカードリーダを準備する
後述する「設立ワンストップサービス」の利用や登記申請書類への電子署名に必要になります。オンラインで設立手続する場合はこれで本人認証と電子署名をするので必須アイテムですね。
なお、マイナンバーカードを読み込むためのICカードリーダーもあわせて準備します。
私はこちらを個人の確定申告時などにも使い倒していますが、特に問題なく動いてくれています。
「法人設立ワンストップサービス」への会社概要入力、申請
登記申請手続きはもちろん、税務署や社会保険事務所など、会社を設立したら様々な役所に書類を提出する必要がありますが、これをまとめてできるオンラインサービスが「法人設立ワンストップサービス」です。
今回はこのサービスを使用して申請してみました。
最初に自分はどこに何の申請が必要か、を確定するための「問診」があり、それに必要な書類の記載事項を入力して申請、という流れでした。
結果、登記申請と税務署、都道府県事務所と市への提出はこれで問題なく完了しました。
ただ、まったくゼロの状態で使用を開始すると突然知らない言葉が出てきて戸惑う代物かもしれません。定款など登記申請に必要な書類はこのシステムで作成することはできないので、別に作成してこのシステムで申請することになります。(私は弥生会計設立サポートサービスで作成しました。)
あと社会保険関連書類は指示通り入力して申請しても他の書類が必要だったり、申請できるはずの書類も不備があったりして結局紙で申請しなおしました・・・。
「かんたん」と標榜しているものもあまり簡単ではない、社会保険関連書類はワンストップで申請できなかったことを除けばなかなか便利なシステムでした。
「法人設立ワンストップサービス」の利用体験については下記記事をご覧ください。↓
会社のハンコを買う
法人の印鑑届出は必須ではないようですが、何かと手続に必要になるので作成しました。実際作っておいてよかったです。ハンコがないと銀行口座も証券口座も開設できません。
下記の代表印(実印)、銀行印、角印のセットを楽天で注文。
商号など必要情報を入力して注文後、3日ぐらいで届きました。
ちゃんとした柘植の印鑑です。ひと昔前は何万円もしていた覚えがあるのですが安くなりましたね・・・。
銀行口座、証券口座開設手続を確認しておく
実際の利用は設立後になりますが、法人で取引や金融資産の運用をするのであればこれらがないと話にならないので、早めに手続を確認しておくのがよいと思います。
法人の金融機関口座を作るためには実際に取引実績があることを示さなければならない、固定電話番号が必要な場合が多いなど、思いのほかハードルが高い印象です。
設立前に準備できることはしておいた方がよいでしょう。
なお、住信SBIネット銀行 では比較的スムーズに口座開設ができました。
以上、合同会社の「設立手続」についてでした。
※法人設立によるキャッシュフロー試算・資金確認も設立前にしています。詳しくは下記の記事をご覧ください。